高1で点が落ちた生徒の多くは、能力が足りないのではありません。中学で通用した勉強の方法を、そのまま持ち込んでいるだけです。
よくある相談のかたち
当塾に来られる保護者の方から、同じ話を何度も伺います。中学までは学年でも上のほうにいた。特に手をかけなくても点が取れていた。それが高1の1学期、あるいは2学期の途中から、明らかに落ちた。本人は勉強していないわけではない。
この状態を「油断した」「部活で疲れている」と説明してしまうと、対処が「もっと頑張れ」だけになります。それでは戻りません。何が変わったのかを先に見るべきです。
中学と高校で、勉強の中身が入れ替わっている
科目名は同じでも、点を取るために要求されることが変わります。
| 中学まで | 高校から | |
|---|---|---|
| 試験範囲 | 狭い。直前の詰め込みが効く | 広い。前の単元を使う前提で出る |
| 問われ方 | 習った解法の再現 | 初見の設定に、既知をどう当てるか |
| 扱う対象 | 具体的な数と図形 | 文字・関数・証明という抽象 |
| 新しい概念の量 | 1年で1冊 | 同じ時間に、数倍が入ってくる |
| 使える時間 | 多い | 通学と部活で、平日の可処分時間が減る |
崩れ方の正体は、たいていこの表の2行目です。中学の定期テストは、授業で扱った問題の数字を変えたものが中心でした。だから「解き方を覚える」で満点が取れた。高校では、見たことのない設定に、持っている道具を当てはめる作業が要求されます。覚える量を増やす方向に努力すると、かえって合わなくなります。
もう一つが3行目です。数と図形の世界から、文字と関数と証明の世界に移ります。ここでつまずいた生徒は、計算はできるのに「何を示せばよいのかが分からない」と言います。これは頭の良し悪しではなく、扱っている対象が変わったことに気づいていないだけです。
家庭から見える兆候
本人が言葉にできないうちに、外から見て分かることがあります。
- 勉強時間は減っていないのに、点だけが落ちている
- 「授業は分かる」と言うが、テストで手が止まる
- 解き直しをすると解けるので、本人も家庭も「できている」と判断してしまう
- 問題集の答えを見る回数が増えている(あるいは、見た記憶が本人にない)
- 模試の判定より、定期テストの点のほうがよい(=範囲を切れば取れるが、初見に弱い)
3つ目と4つ目が特に紛らわしい。解答を読んで納得することと、自力で再現できることは別です。この差は、家庭では見えません。本人にも見えていないことが多い。
やりがちで、効かない対処
- 勉強時間だけを増やす。方向が合っていない勉強を長くしても、比例して伸びません。
- 問題数を増やす。解いた数ではなく、1問から何を持ち帰ったかで差がつく段階に入っています。
- すぐに文系へ寄せる。数学の点だけを理由に進路を狭めるのは早すぎます(文理選択で、本当に決めているもの)。
- 点数を責める。本人はすでに、原因が分からないまま落ちていることに不安を感じています。
効く順番
当塾が高1の生徒に対してまず行うのは、次の順です。
- どこで詰まっているのかを、問題単位ではなく理由単位で特定する。計算なのか、方針が立たないのか、そもそも問題文が読めていないのか。この3つは対処がまったく違います。
- 定義に戻る訓練。「最大値とは何か」「接線とは何か」を、言葉で言えるようにする。高校数学の初見問題は、ほぼここから手がかりが出ます。
- 解き直しを、答えの再現ではなく手の再現にする。「なぜその一手が見えるのか」を言えるところまで戻す。
- そのうえで、演習量を確保する。順番が逆になると、量が効きません。
当塾は高1のうちに微積分・ベクトル・複素数平面まで進みます(カリキュラム)。速いように見えますが、これは詰め込みのためではなく、高2以降を綜合演習に充てるための配分です。初見の問題に当たる時間を、どれだけ確保できるかで最後の差がつきます。
保護者の方にお願いしたいこと
- 点数ではなく、どこで詰まったかを聞いてください。答えられないなら、そこが最初の問題です。
- 中学時代の成績と比べないでください。比較すべきは、入試で要求される水準です。
- 「地頭」で説明しないでください。方法の問題を能力の問題にすると、打てる手がなくなります。
気づいたときが、いちばん早い
高2の秋以降に同じ状態を立て直すことも、できないわけではありません。ただし、そのときには受験までの残り時間が減っています。高1の1学期で気づけたなら、それはかなり良い位置です。
当塾では、入塾前でも学習相談を承ります。答案とテストを見せていただければ、どの型の崩れ方かをその場でお伝えします。
本稿は統計ではなく、当塾での指導経験にもとづく整理です。すべての生徒に当てはまるものではありません。原因が学習方法ではなく、体調・生活・人間関係にある場合もあります。その見極めを含めてご相談ください。